MODEL EXPERIENCE

生野には「◯◯が地場産業のまち」と呼ばれるその頭に入る「ものづくり」が、実は多種多様なことに気づく。靴、鞄、眼鏡といった製品が並ぶこともあれば、金属加工や木材加工、プラスチック加工など製品になる前のものたちが今日もつくられる。その豊かな複雑さこそが生野の磁場。一つにとどまらない、ものづくりの生野にぞっこん惹きつけられてみよう!

Spot 1

リゲッタ

住所 大阪市生野区巽北3-14-20
WEB https://www.regeta.co.jp/ 
Instagram @regetaofficial 

楽しく歩く人をふやす

下駄を履いたことがある人は意外と少ないかもしれない。でも、履けるんです。素敵に最高の履き心地で。唐突な書き出しだが、リゲッタは「下駄(GETA)をもう一度(Re:)」から来た名前だ。そんな名前を冠したリゲッタは、生野区の靴づくりでも、ものづくりでも、チャレンジを続ける一つの現場である。

生野区は靴製造も集積するまちだ。靴製造の町工場は下請けが大半という中、小さな靴工場が自分たちのブランドをつくろうと一歩を踏み出したのがリゲッタの始まりだ。代表の高本さんを中心に100人を超えるスタッフが働く企業へと成長を続けている。

そんなスタッフ全員が口をそろえて「楽しく歩く人をふやす」がモットーだと教えてくれる。ものづくりの最前線にいる人たちが、自分たちの手で作るものを楽しんでほしいという素直な気持ちが伝わってくる。

町工場、靴職人のバトン

靴づくりは職人たちのバトンのリレーで成り立っている。生野のものづくりの現場では、よく「工程」という言葉を耳にする。裁断、縫製、つり込み、底付けなど、工程ごとに、職人たちの手により仕上げられたバトンを、まち全体をリレーしながら、一足の靴が形作られていく。

自社の工場も持っているリゲッタでも、そんな職人たちのいる町工場と連携しながらの靴づくりをつづけている。リゲッタと関連する町工場は100近くにのぼる。これらの小さな町工場はこのまちになじんでいる一方で、外からでは何を作っているのか、なかなか見えてこない。閉ざされがちな工程の一部を、自社工場をオープンにすることで、ものづくり、靴づくりそのものを体感できる場を生み出そうとしている。これも靴づくりのまち生野から世界に向けた大きなバトンになりそうだ。

チャレンジできる喜び

リゲッタでの体験は、さまざまな場面で出会える。リゲッタ本店だけでなく、イベントなどでのワークショップも活発だ。生野のまちはコミュニティスペースも様々な形で生み出されており、地域に根差したリゲッタに出会うこともできる。例えば廃校になった学校を舞台にした地域体験イベント「いくのみんなの文化祭」では、リゲッタをデコレーションするワークショップやリゲッタ飛ばし世界選手権なども行われた。同じく廃校を活用して生まれたコミュニティパーク「いくのパーク」では、リゲッタの高本さんらが店主を務めるEXPO酒場というイベントも開かれ、地域を越えて交流の輪が広がっている。

なんでもやってみることが肝心。遊び心を忘れないチャレンジが、ものづくりを楽しくしている。

つなぐから、ひらくへ。

北巽駅すぐのリゲッタ本店は、材木店だった建物をリノベーションして作られている。かつては、大きな材木を出し入れしていた工場で、大きな入口をくぐると明るい空間が広がる。入ってさっそく、なんと「リゲッタ」に履き替えることになる。これも歩くことが楽しくなるポイント。大きな空間をぐるっと巡りなら、商品を選んだり、年季の入った靴づくりの機械を間近に見ることもできる。ワークショップもここでも開催されている。

実は、このリノベーションされた建物の中にも、「生野ものづくり」の技術がちりばめられている。リゲッタもそうだが、この場そのものもまさに「メイド・イン・いくの」なのだ。

楽しく歩く人がふえると、まちが元気になる。ものづくりの現場を歩きながら、生野の日常も感じながら、その面白さを全身で感じとってほしい!

リゲッタ代表取締役  高本やすお

IKUNO下町スポット

喫茶店「茶異夢」。素敵な当て字ですねと、「ちゃいむ」と読むことを教えてくれた。近所の町工場の人にも御用達のくつろぎ談話空間。

住所:大阪市生野区巽西1丁目4−31