住所 大阪市生野区田島6-4-4
WEB https://www.randsel.jp/
Instagram @ikutarandsel
300の手作業
生田ランドセル、界隈ではそう呼ばれて親しまれている。ランドセル工房生田を訪れると、代表の長井さんをはじめ職人たちスタッフからも、どこからとなく優しさが伝わってくる。町工場という響きには薄暗いトーンがあるけれど、通りに面した大きな窓からやわらかな明かりに包まれた作業場が顔を出し、子どもたちの秘密基地に帰ってきたような温もりも感じられる。
ここで作り上げられるランドセルは、優しさそのもの。同じものがない一枚の革を裁断するところから、厚さを整える漉きや裁断面を滑らかにする塗り、縫製など、作り手たちが手を取り合いながら形にしていく。300もの工程を経たランドセルは、複雑なのにとてもシンプルで完成されたデザインとなる。同じ形のランドセルでも、一目みれば、自分たちのつくったランドセルだとすぐにわかるという。すべての工程を丁寧に作り上げたからこそ出せる、生田ランドセルへの愛情だ。
ランドセルのまち
鞄づくりも、大阪・生野のものづくりの一つである。日本で鞄の街といえば、豊岡が名の知られたところだが、豊岡の鞄づくりをも唸らせると言われる技術力が生野にはある。とくにランドセル製造が盛んで、かつて数十社にのぼるほど、地場産業としてにぎわっていた。現在では二社のみとなったが、その技術が継承されている。
一枚の革からランドセルをつくる工程は、すべてランドセル工房生田で行われているが、連携する地場企業があるのも生野ならではだ。パーツとなる金具の製造や、使い込んだ機器の修理でも、このまちの企業や職人たちとつながっている。ミシンが壊れたときはミシン屋さんがカブで駆けつけてくれる、そんな光景が身近にある。
みんなで作り上げる、共に過ごす時間
生田ランドセルの魅力は、作る前から、子どもや家族とランドセル選びを楽しむことから始まる。そして本気で楽しめるように取り組まれているのは、何よりも「作る」を体験すること。あたたかな雰囲気の工房見学も、革を手にしながらのワークショップも、「作る」を満喫することができる。
初めての出会いから6年間共に成長するランドセル。使い始めてからも、生田ランドセルとの関係は途切れることなく、最後まで大切に使い続けられるよう無償で修理してくれる。使い終えたあとに、小さなランドセルとして仕立て直すサービスもあり、関わりは続く。さまざまな時間を横断するように、一つのランドセルを作り上げていく物語がある。
生野で子どもたちのランドセルを作り続ける
生野まるごと生田ランドセル。いろんなランドセルがある中、生野の子どもたちみんなが、生田ランドセルを背中にまちを駆けめぐる日を目標に、前へと進み続ける長井さんたちがいる。それは生野のまちも、ものづくりも、まるごと愛しているから湧いてくる思いであり、ランドセルに掛けるありったけの優しさを感じずにはいられない。
130年ほどの歴史のあるランドセルを、70年以上にわたり作り続けている。世界に製造工場を移した時期もあったが、今は小さな工房と大きく広がるものづくりのまち生野で、一点一点自分たちの手で作り上げていくことへのこだわりを持ち、夢を膨らませている。
出会えばわかる本物の楽しさ。そう、とてもシンプルなことなのだけれど、工房で出会う職人たちはとてもおしゃれで、作る楽しさがその姿からも伝わってくるはず。
長井さんおススメの
IKUNO下町スポット
「美よし乃」のカツ丼。奇をてらわない、けれどしっかりとした味わいとボリューム。美よし乃の文字が躍るレトロ看板と暖簾が目印の下町食堂。
住所:大阪市生野区田島5丁目15−1
電話: 06-6758-3140